79%が「国会での審議が尽くされたとは思わない」

本日の東京新聞朝刊は、「戦争法案」成立を受けて緊急に行われた共同通信社の全国世論調査の結果を報じている。「国会での審議が尽くされたとは思わない」が79%、これに対して「尽くされたと思う」は14.1%。多くの国民が、この法案に関する政府の説明に強い不満をいだいていることが分かる。

政府は衆参で200時間以上、審議したというが、そもそも今回の法案は10本の法改正、1本の新設法案を束にして一括審議するという異例のものだ。それぞれ十分に時間をかけて審議すべき重要な法律であるにも関わらず、11本を一括審議するものであるため、法律一本当たり20時間程度しかかけていないことになる。実際の審議中でも、法案の細かい条文の議論はほとんどなされていない。このような法案の出し方自体が欺瞞であり、国民を欺くためのものだ、ということをまず、指摘しておきたい。

さらに、そのような異常な法案提出の形式の上に、審議の実態(政府答弁)は「時間稼ぎ」、「言い逃れ」としか言えないようなものだった。今回の法案の審議では200回以上、審議が中断されたという。国会運営としては極めて異例の事態だ。その理由は、このブログでも以前に指摘したように、首相や担当大臣が質問に対してまともに答えようとしなかったからだ。「Yes/No」で答えるべき質問に対しても、「Yes/No」は答えず、紋切型の答弁を繰り返すばかり。

何故、質問にまともに答えないのか。「この法案は日本国民の平和と安全のため」などではなく、「アメリカのために、自衛隊がより広範囲に(地域を限定せず)」、どんな場合でも「切れ目なく(「日米防衛協力のガイドライン」英文では seamless operationと書かれている)」、米軍と共同の軍事行動を取れるようにするためのものだからだ。そんな本音を、国会で言えるわけがない。

実に情けないことに、実際には「ガイドライン」が先にあり、法案はいわば「後づけ」にすぎない存在になっている(もちろん、現実の政権や自衛隊の行動を実際に規定するのは法律なので、法律そのものが大問題なのはいうまでもないが)。さらにその法案が憲法違反であるから、「ガイドライン」が日本の憲法や法律の「上」にある形に、実質的になっている。(もちろん、形式的には「ガイドライン」には法的拘束力はない。)

少し話題は変わるが、今回、この法案についてはTVのワイドショーなどでも大きく取り上げられていた。それを見ていて、いつもしたり顔で意見を述べている、一部の「有名コメンテーター」や「政治評論家」、「TV・新聞などの論説委員」らの欺瞞性が、このような大きな問題に直面したために、はっきりしてきたように感じた。もちろん、真剣にこの法案の危険性を憂い、違憲性に異を唱えて頑張っている人たちも多かったのだが、今回の問題は誰が「偽善者」であるかを識別するフィルターとなったように思う。

色んなコメントの中で、指摘したいことは沢山あるが、「偽善的」コメントの例として一つだけ挙げれば、「野党も対案を出すべき」というものがある。これも、以前から良く言われていることで、多くの人は「それもそうかな」と思ってしまいがちなのだが、実際には野党側も具体的な案を出しているのに、メディアがそれを意図的に伝えず、国民に情報が届かないこともある。また、そもそも「対案」を出すことに意味がない法案もある(今回の「戦争法案」がそうだ)。

特に今回の戦争法案の場合、「対案を」というのは全くのおかどちがいだ。まず言えることは、今回の法案はそもそも憲法違反であり、国会に提出すること自体が間違っている。間違った法案に対案も何もなかろう。論理的に言って、間違った法案は取り下げ(廃案)しかない。

もう一つ言うべきことは、福島さんも17日の鴻池委員長不信任決議案の賛成討論の中で、また委員会質問の中で指摘しているが、法律は「立法事実」があって初めて作られるものだ、ということ。つまり「こういう必要性があるので、この法律を作る」という立法の根拠だ。

立法事実と司法事実

今回の法案の場合、「何故、集団的自衛権の行使を認めることが必要なのか」を説明しなければならない。政権は当初、必要な事態として「ホルムズ海峡の機雷掃海」と「米軍艦船で避難する日本人母子の保護」を挙げていた。ところが、参議院での審議中に、首相は「ホルムズ海峡の機雷掃海は想定していない」と答弁し、中谷防衛大臣は「日本人母子が乗っていることは条件ではない」と答弁している。つまり、法案の必要性を政権自らが否定したことになる。それ以外、具体的に「集団的自衛権行使の必要性」は説明できなかったのだ。つまり、今回の法案には、法案を制定する根拠となる「立法事実」がなくなってしまったということだ。

「具体的な必要性」がない法律は、「制定する必要がない」のであるから、「対案を」というのは全くの筋違いで、そんなことを言うこと自体が欺瞞・知らない人に対するゴマカシ、デマゴギーでしかない。

法律的な議論には難しいところがあるが、日本の今後の安全保障、日本人の命がかかっている大問題だ。メディアはこのような法律的な問題点をこそ、しっかりと分かりやすく報道・解説し、国民の正しい判断に資することが最大の使命ではないのか。

私はTVなどのメディアで働く人たち全般を非難するつもりはない。今回の法案について「変だな」と思いながら、表には出せないこともあろう。しかしTVなどのメディアは国民に対する影響力が大きい分だけ、彼ら・彼女らにも頑張って欲しいと思う。その上で、我々も「メディア・リテラシー」をしっかりと鍛え、正しい判断ができるようにしていきたいものだと思う。

(2015-9-21)
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参議院平和安全法制特別委 2015年9月17日 鴻池議長不信任決議案賛成討論
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