具体的な数字にもとづく経済報道を

 本日(3月21日)の東京新聞社説は「黒田日銀1年」と題してアベノミクスについて論じている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032102000176.html

 消費者物価指数の上昇率(前年比1.3%)や、今春闘の「成果」といわれるベアも給与の押し上げ効果は0.3%、などといった具体的な数字をあげてアベノミクスの問題点を論じていて、良い社説だと思う。(このような具体的な数字を提示するのは、経済を論じる報道なら当然のことだと思うのだが、最近のTVなどでは具体的な数字抜きの「景気は上向いてきている」、「株価は上昇している」的な、ムードだけを煽る報道が多い。)

 今回、大手各社では「ベア」が相次いだが、それでも数字を見れば2000円~2500円アップに過ぎない。日銀の物価上昇率のターゲットは2年間で2%だそうだから、このアップ分が年率で1%程度でなければ、物価上昇と合わせると実質の賃金が上がったとは言えないわけだ。なので、TVで「大手各社のベア相次ぐ」という報道を聞いて私が感じた「素朴」な疑問は、「2000円~2500円のベアは何%の賃金アップに当たるのだろう?」ということだった。

 こんな数字は、TVに出ているような「エコノミスト」たちは良くご存じのことだろうから、教えてくれてもよさそうなものだが、こういう具体的な数字はTVではほとんど報じられることがないように思う。

 そこで自分で計算することになるが、これを計算するには「日本の労働者の平均的な賃金」を知らなければならない。そのデータはどこにあるのだろう?とネット検索してみると、総務省統計局のホームページにこんなデータ(平成24年分)がある。

http://www.stat.go.jp/data/nihon/zuhyou/n1602400.xls

 全産業の平均が一番上に出ているが、男女別なので、これをさらに平均して全労働者の数字にする必要がある。(平均給与の男女格差も興味のある数字だが、その点は別の機会に論じたいと思う。)その計算結果は32万5400円。これは全産業の、平均年齢40歳~42歳、勤続年数9年~13年(平均年齢・勤続年数は男女で差がある)の労働者の賃金の平均値ということになる。なお、このデータは「常用労働者」と注にあるので、非正規労働者は含まれず、「正規雇用」の労働者のみの統計データである。

 この数字から計算してみると、2000円のベアは約0.61%の賃金アップ、2500円のベアは約0.77%の賃金アップ、ということになる。「近年にないベア」と騒ぐ割には、物価上昇率ターゲットの年1%に到底追いつかない数字だ。これでは、いわゆる「実質賃金」は、やはり下がり続けることになるではないか。

 東京新聞の社説では「今回のベアの給与押し上げ効果は0.3%」と書かれているが、上記で計算した数字は正規労働者のみのものなので、非正規労働者が今や全労働者の半数に近づいていることを考えれば、上記の0.61%~0.77%という数字は整合性があると思う。

 経済報道は、このような具体的な数字に基づくものでなければ意味がない。経済報道に携わる者は、そういう自覚を持つべきだろう。ただ、情報の受け手側からいえば逆に、そういった具体的な数字を出さない経済報道は眉唾モノと考えるのが、現代に必要な「情報リテラシー」の一つなのかもしれないが。

 なお、今回見つけた総務省統計局のホームページはとても役に立ちそうな情報満載でお勧め。是非一度、ご覧ください。

http://www.stat.go.jp/index.htm

(2014-3-21 by 山猫軒)
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