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福島菊次郎さんのこと

日記
12 /24 2014
木村えい子です。今日はずっと以前に、反骨の報道写真家、福島菊次郎さん(現在93歳)と出会った時の事を書きます。


1970年、東京・新宿、喫茶風月堂。ドアを開けると紫煙が漂う独特な雰囲気、ちょっと気遅れがした。九州から出てきて3ヶ月、私がまだ大都市に馴染めない頃。ましてやヒッピーや文化人が集まり、たむろすると聞いていた風月堂での待ち合わせなのだから。

待っていたのは福島菊次郎さん。私は、写真家だという以外、何も知らなかった。知人に、写真を青年向けの雑誌に使いたいので、木村さん、お願いできないかと頼まれ、断り切れずOKしてしまった。撮影場所は新宿御苑。こんなこと初めてだけど、写真をパチパチと撮ればすぐ終わり、と勝手に想像していた。

やってきた福島菊次郎さん、バンダナを巻き、指には蜘蛛をアレンジした指輪。田舎では出会うことがない格好の人だ。「キザだな」私はそんな反応をしていた。私も二十歳代、若かった。

福島菊次郎さんは、おもむろに私の事を聞き始めた。初対面だからと思って丁寧に答えていたが、なにしろ次々と色んなことを聞かれるのだ。それより早く新宿御苑に行って撮影して欲しい、内心そう呟いていた。

そのうち福島菊次郎さんは私に、自分のことも語り始めた。軍需産業を告発する写真集を出し、その後、何者かに襲われ「鼻の傷はその時のものだ」と続き、さらには「不審火で家も全焼」。聞いているうちに、さすがに鈍感な私でも、「とんでもない人が目の前に居る」とドキドキ、驚きの体験だった。

「写真では食えないから彫金で食っている」と。蜘蛛のデザイン指輪は彼の作品、稼ぎの種だったのだ。彼をキザに見てしまった私は、微妙に恥ずかしかった。福島菊次郎さんには3人の子供達がいたが、その子供たちには「僕にもしものことがあったら、どう暮らしていくか、考え、力を合せ生きていくように」と。今、私の目の前にいるのは、命がけで写真を撮っている人なのだ。

私は遅まきながら、福島菊次郎さんの写真集をみる中で、写真と言うのは瞬間を切りとる写し方もあるけど、福島菊次郎さんは対象の奥行き、深さを写し取る、「人間を撮るのだ」。だから、次々と私に質問を続けたのだと気付き、ハッとした。私が写真に対する考えを根底から見直し、その深さに気付かされたのは、福島菊次郎さんとの出会いによるものだ。二十歳代の小娘にも真摯に向き合う姿勢は、私の人生にドカンと響き、刻みこまれた。

44年前のこと、私が何を話したかは忘れてしまったけど、福島菊次郎さんのことは、いまも強烈に、鮮やかに残っている。

(2014-12-24 by 木村えい子)


只今、反骨の報道写真家、福島菊次郎写真展開催中。ぜひお出かけ下さい。

福島菊次郎 全写真展
展示内容: 「ピカドン、ある原発被災者の記録」「女たちの戦後」「祝島の原発反対運動」「自衛隊と兵器産業」など15テーマ、2000点
日程: 2014年12月22日(月)~ 27日(土)
時刻: 10:00 ~ 20:00(最終日は18時まで)
会場: パルテノン多摩展示室(小田急多摩センター駅・京王多摩センター駅・多摩モノレール多摩センター駅 徒歩5分)
入場料: 無料

講演会『93歳のラストメッセージ』
日程: 2014年12月27日(土)
時刻: 12:00開場 13:00開演 ~ 16:00
会場: パルテノン多摩大ホール(小田急多摩センター駅・京王多摩センター駅・多摩モノレール多摩センター駅 徒歩5分)
入場料: 1,000円(先着順・当日券のみ)
ゲスト: アーサー・ビナード(詩人)

なお、映画上映も含めた案内が、以下にあります。

福島菊次郎全写真展・講演会・映画『ニッポンの嘘』のお知らせ